研究報告
平成11(1999)年度の研究活動を終えて

豊中市における公共建築物のライフサイクルコストの研究
―計画的・効率的な行財政運営を目指して―

 平成11年度は上記テーマについて、研究委員として加藤晃規氏(関西学院大学)、大谷恭弘氏(神戸大学)、五島輝彦氏(大林組)の指導・助言をいただき、建築課、教育施設課、財政課、企画調整室の職員の研究会への参加・資料提供を受けながら研究を進めてきました。また、本調査研究は椛蝸ム組との共同研究という形をとり、今回、大林組が開発したO-LCCという建築物の生涯費用算出ソフトを用いて、東豊中複合施設(老人ディ、老人憩いの家、保育所)のライフサイクルコスト(生涯費用)の試算等を行いました。このたび調査研究報告がまとまりましたので、以下にその要旨を載せることにします。

■要旨
 豊中市には主なものだけで228箇所の公共建築物があるが、2010年ごろになると築30年以上の建築物は160施設に膨れ上がり、これらの老朽化した建物の維持保全、リニューアル等が大きな課題になってくる。今回、一般会計における主要公共建築物218施設(企業会計、特別会計分のぞく)の長期修繕費用の推移を試算したが、それによると、2001〜2020年の20年間で約954億円、年平均で約47億7千万円もの維持補修費用がかかるという結果が出た。今までは、各種施設数を充足させるべく新規施設建設に重点がおかれ、既存施設の維持保全については、あまり省みられなかったが、今後は、既存建築物のライフサイクルコストの低減を図りつつ、適切な維持保全やリニューアルを図ることが必要になってくる。新規施設整備においても、イニシャルコストだけではなく、その建物を建てることによって生じる生涯コストや、その建物を使って行う事業にかかる人件費、事業費などの総費用も含めたコストを考慮に入れた事業決定がなされるべきである。東豊中複合施設のO-LCCによる試算では、建物の耐用年数を60年間とすると、建築費約13億円に対し、生涯費用は約53億5千万円であり、建築費は生涯費用の24%ほどに過ぎず、残りの約76%の費用が修繕費、保全費、光熱水費などのランニングコストになる。建築後の費用が建築費の約3倍にもなる。これに人件費と事業費を加えると、さらにランニングコストは高くなる。

図は、前述のLCCの構成比率を円グラフにしたものである。


 上記の問題を解決するにはどうすればいいのか。以下に解決策を例示する。
【解決策】(1部分のみ抜粋)
 既存建築物の適切な維持保全を図るために
@ 維持保全の重要性の認識
A 維持保全に関する専管部局の設置
B 施設管理に関するデータベースの構築
C 施設管理マニュアルの作成
D 技術職の人材育成
E 財政課に技術職配置
→基本方針の策定
→建築課、教育施設課の役割の見直し
→図面システム、LCCシステムなど
→原局の施設管理者日常点検用として
→新技術、劣化診断技術の習得など
→コスト管理、建築課と違った視点

 ここでは、LCCシステムの開発が決め手となる。詳しくは調査報告書にて。

(太原)