研究報告
平成12年度(2000)年度の研究活動を終えて

■テーマ

『IT産業振興“とよなかモデル”』

―税収の安定確保に向けてー



1.問題意識と調査目的

 バブル経済崩壊、既存産業の衰退、大阪国際空港国際線の移転、阪神淡路大震災、住民税減税などにより近年歳入の大幅な落ち込みか見られる。従来、豊中市は住宅都市として個人市民税を中心に安定した財政基盤のもと、都市インフラ、教育、福祉などの分野において質の高いサービスを提供してきたが、少子高齢化による生産年齢人口の減少、年金生活者の増加、既存産業の衰退、女性ワーカーの増加など、今後の豊中市をとりまく社会経済環境を踏まえるならば、地域産業振興、独自の地域産業政策による税収増、安定財源の確保を考える必要がある。本研究では、豊中市にふさわしい新しい成長産業の創出、支援策のあり方を、具体的施策事例を含めて提示した。

2.研究体制と調査研究の方法

 本調査研究は、研究委員として小長谷一之氏(大阪市立大学)、小早川謙一(豊中商工会議所)の指導助言をいただき、商工労政課、企画調整室、納税管理課各職員の研究会への参加・資料提供を受けた。 統計データ、各種行政資料から豊中市における税収、産業の現状と課題を把握し、既往研究の調査、先進事例実地調査、市内実地調査を行った上、研究会で具体的方策を検討した。

3.調査結果

■業種別法人市民税の推移、事業所数の変遷などの統計データからは、産業の構造変化、既存産業の衰退が読みとれる。サービス業は、法人市民税、事業者数ともに増えているが、詳しい業種は統計からは分からない。豊中の立地特性や、その産業の持つ特性から、今後、成長が期待されるIT産業の振興による地域経済活性化が住宅都市「豊中」にふさわしいと考え、先進事例、市内実地調査にも取り組んだ。先進事例の調査では、和歌山市、川崎市、相模原市における新産業支援施設の見学及び施策のヒアリング行った。市内実地調査では、豊中駅前、緑地公園駅前のテナントビル空き状況、賃料などを調べた。

■【豊中市におけるIT産業振興のメリット】 

■今回の調査研究では、組織的、時間的な制約もあり、市内産業の実態把握不足や、産業振興“とよなかモデル”について具体的な構想を提言できるところまで到達していないが、今後、関係者が議論する上で参考になるように、モデル検討にあたっての基本的考え方やモデルの基本項目について提示するとともに、具体的な政策事例としてSOHO、ベンチャー育成支援実験施設プラン(案)を提示した。 本研究は財源確保の視点で取り組んだが、地域産業政策は財源確保のみならず、次世代の『地域』のあり方に関わるテーマでもある。                 

          (太原)