研究中のテーマ
平成14年度

◆研究概要(研究結果)

豊中市の廃棄物行政における市民参加の検討

2003.5.19



◆自主研究中間報告 

 平成12・13年度の意識・行動調査に引き続き、廃棄物に関する調査研究を行っています。本年度のテーマは市民参加です。地方分権や住民自治の観点から、市民参加の必要性・重要性を説く声が高まっています。これは、廃棄物行政においても同様です。廃棄物の収集・処理は法律で市町村の固有事務と定まっていること、ひとりひとりの行動が廃棄物減量に直結することから、市民参加によって生活者の感覚に即した施策を推進し、その実効性を高めるとともに、市民の理解と実践を得る必要があります。

 他市の事例では、環境基本計画やごみ焼却施設選定の検討委員の多くを市民が構成する、行政が地縁団体を新たに組織し直した団体に地域単位で施策の決定権を委ねるなどの方法がとられているものがあります。豊中市でも廃棄物に関連して廃棄物減量等推進委員やごみ減量計画策定委員の市民公募など、市民参加を図る取り組みが行われています。しかし、参加する市民の数が少ない(募集人数より応募人数が少ない)、顔ぶれに偏りがある、一部の人の動きに終わってしまっているなどの問題が指摘されています。また、計画の策定や焼却施設の選定が目標となり、策定や選定が終わった時点で市民参加の動きが停滞する危険性をはらんでいます。市民参加がどのような効果をもたらすかは、長期的な視点で考える必要があり、具体的な検証はまだなされていないと考えられます。

 豊中市民の特徴として、平成12・13年度調査研究結果から、「多様性」「ゆるやかなつながりの複層的な存在」が浮かび上がりました。価値観の多様化が進み、活発化しつつある市民活動も領域が多岐にわたり、廃棄物はそのひとつに過ぎません。市民の手によって廃棄物処理計画や分別収集の方法が決定されることが理想だと考えます。しかし多様化が進み、定住意向のない市民も存在する状況を考えると、行政に発言する市民のみならず、多様な関心領域を持つ市民がごみ排出について責任感や主体性を持って行動することも市民参加の一形態として考えることが必要です。
 現在、関連部局の担当者にヒアリングを行っています。委員の公募、廃棄物減量等推進員、市政モニターなど、行政が参加の場を用意したものについては、「『お膳立てされた場でのご意見番』という意識の市民が多い」、「いろんな仕掛けをしても次のステップにつながらず一過性の動きに終わってしまう」などの声が聞かれました。また、「自主的に活動する市民団体はいるが、一部の先進的な人の動きに過ぎない。他の市民がそういう意識を持っているため、活動の輪が広がらず、先細りが心配される団体もある。」という意見もありました。
 アーンスタインは「市民参加の階梯」で市民参加を八つの段階(@世論操作、A不満をそらす操作、B情報提供、C意見聴取、D懐柔、Eパートナーシップ、F一部権限委譲、G住民によるコントロール)に分けています。豊中市の廃棄物行政における市民参加は、「Eを目指しているが、実際はA〜Eの間を行きつ戻りつする状態にある」といえるのではないでしょうか。その「行きつ戻りつ」が螺旋状に循環し、全体としての段階を高めていけるような方法はどんなものか、そのために必要なツールは何かを探りたいと考えています。

2002.12.27 (村上)



◆研究の背景と目的
 ごみの収集や処理については、市民は行政の呼びかけに協力する形で受動的に行動してきた。最終処分場の不足や資源・エネルギーの枯渇が危惧される今日では、発生したごみの分別のみならず、発生抑制・再利用を考慮しなければならない状況にある。その際、市民が能動的に廃棄物行政に関わり主体的に行動することが求められる。
 現在、ごみ減量計画策定委員会策定委員の公募、市民検討会議の設置が行われ、市民参画を図る動きがあるが、参画する市民は一部の人に限られている。今後の廃棄物行政において市民参画を推進していくための方策を検討する。また、市民との協働でごみに関するガイドブックの作成を試み、その作成経過やプロセスを方策検討の参考として役立てる。

◆研究内容
 現在の市民参画状況の把握
 課題の整理
 先進事例の研究
 豊中市における市民参画のあり方の検討
 ごみガイドブックの作成

◆研究体制
 研究会(行政+研究委員+市民)の開催(年4回)
 ワークショップ(行政+研究委員+市民)の開催(年3回)

2002.6.24 (村上)